イギリスと言えば幽霊屋敷の本場中の本場。国内に多くの幽霊屋敷が存在し、国民たちもそれを受け入れている。そんなイギリスには、まさに「規格外」の幽霊が出ることで知られる古い邸宅がある。自慰行為をする猿がでるというのだ。
失恋した邸主の娘とともに死んだと伝わる「猿」
幽霊といえば、日本では古来から白装束に長い髪の女性や、髪を振り乱した落ち武者が代表的だ。
現代にいたると、若い女性、老婆、小さな子どもの目撃例が多い。
ひとりとして同じ人間などいないにも関わらず、幽霊の目撃譚となると、ある程度類型化するのは不思議ではある。
幽霊になるのは人間だけではない。動物霊の目撃もある。
かわいがったペットの犬や猫が、お盆の時期になると暮らしていた家の中を歩き回る気配を感じる、といった報告は洋の東西を問わず多く寄せられる。
日本のポップス黎明期から活動を続けるミュージシャン兼タレントのエド山口氏は、自身のYouTubeチャンネルで「夜釣りをしていたら、滑落死した羊の霊を見た」と証言している。
長い髪の女、しわくちゃの顔の老婆、強い恨みを残した落ち武者、これら「ありきたりな」幽霊目撃譚に飽き飽きしたオカルト・ジャンキーの皆さんに朗報だ。イギリスから、一風変わった幽霊の目撃情報が寄せられている。
イギリスのドーセット州に中世の美しい城、アヘルハンプトン邸が今も残る。
この城は、1485年にウィリアム・マーティン卿によって建設され、以後、持ち主をたびたび変えながらも、今日まで生き残ってきた。
邸内には、15世紀当時の中世の家具や、エリザベス朝の彫刻、美しい装飾が施された天井、チューダー時代の美術品などが残され、イギリスでも有名な観光地として知られている。そして、幽霊屋敷としても。
邸内の大広間では、グレイ・レディと呼ばれる女性の幽霊がホールを歩き回る姿を多くの人が見かけている。この暗い影は、修道女の幽霊と考えられている。
また、ワインセラーにはクーパーという名の壁を叩く幽霊がいる。
一度だけ、グレートホールと名付けられた部屋で、ふたりの幽霊が決闘しているのが目撃されたこともある。
しかし、このイギリス屈指の幽霊屋敷で、もっと有名なのは「自慰をする猿の幽霊」だという。
かつてこの邸宅では猿が飼われていた。今も残るマーティン家の家紋には、鎖に繋がれた猿が描かれている。
また、マーティン家の墓地にはひとつ、苔むした小さな墓石が残されており、これがその猿の墓だと伝えられている。
猿の死因にはいくつかの説がある。
もっとも有名なのは、邸宅を建てたウィリアムの娘エリザベスが失恋、心を取り乱し、自身の部屋に閉じこもって自殺した。
その際、猿も同じ部屋にいたが、娘と猿が行方不明になったことに誰も気が付かず、猿もまた餓死してしまったというものだ。
なんらかの事故で、誤って壁の中に閉じ込められてしまい、餓死したという説もある。なんにせよ、どこか狭いスペースで餓死したということなのだろう。
この猿の幽霊は、昔から木からぶら下がって揺れる様や、壁を爪で引っかく音を出すことで知られていた。
だが、目撃証言のほとんどが「楽しそうだった」「人懐っこい印象だった」と、楽しげな雰囲気であることがわかる。
ただひとつ、猿が自慰を行なう際に上げる鳴き声によく似た声が、いまでもときおり聞こえるという。
下世話な噂を好む筋の間では、「失恋がきっかけで亡くなった、エリザベスを想像して猿の幽霊が自慰をしているに違いない」「あの猿の幽霊がいつもご機嫌なのは、性欲を発散できているからだ」ともっぱらの噂とのことだ。
イギリスでは2020年5月上旬現在、新型コロナウイルスの影響によるロックダウンが続いている。
「ロックダウンが開けたら、遠出するんだ」と、楽しみにしている人たちの中には、この美しい邸宅をその旅行の候補に入れている人も数多くいる。
その中には、この自慰行為をする猿を見に行くためという人も、何人かはいるかもしれない。珍しいからね。
出典:Ghost of a Masturbating Monkey Haunts a British Estate (Really!)