心霊スポット「活魚」

心霊スポット「活魚」で出会った怪異【体験談】


かつて、全国各地の心霊スポットを精力的にまわっていた時期がある。
多くの場所ではなにも起こることなく、友人たちとの徹夜のドライブを楽しむだけだった。
しかし、中にははっきりと「幽霊」とは言い切れなくとも、不思議な音を聞いたり、奇妙なモノを見かけたりした。何回かにわたって、これまで訪れた心霊スポットのレポートをお届けしようと思う。

▼目次
いわれ無きはずの心霊スポットに「いわれ」ができた

いわれ無きはずの心霊スポットに「いわれ」ができた

元々は「油井グランドホテル」という名のホテルだったようだが、看板に今でも残る文字から、「活魚」という名称で一般には広く流布している。

この地に伝わる心霊スポットとしての怪談は、他愛もないものだ。
曰く、ホテル時代に焼身自殺が起こった。
曰く、自殺ではなくカップルの痴話喧嘩が原因の刺殺事件だ。
いずれの情報も確たる証拠や報道はない。
朽ち果てた建物が残っている理由も、権利者不明か、権利者が取り壊し費用を惜しんでいるからなのだろう。

ところが、なんの根拠も理由もなかった心霊スポットだった「活魚」に、不幸にも「根拠」が備わってしまう。
2004年12月22日未明、斎藤義仁(当時20歳)ら5人に拉致された女子高生のTさんが、絞殺される。その場所が、心霊スポット「活魚」だった。

この場所を訪れたのは、事件から間もない2005年1月4日のこと。正月早々、なにをしておるのかと我ながら情けなくなる。
現地に着くと、建物入口は警察の貼ったロープとバリケードで塞がれていた。
被害者であるTさんに手向けられた花束や飲み物が、その近辺に備えられている。
心霊スポット探検なんてしておきながら、その不謹慎極まりない行為を、少しでも赦してもらおうと、手を合わせる。

敷地前に手向けられていた花束

鬱蒼と茂った木々をかき分けながら敷地に入ると、そこにはベージュ色の2階建ての建物が残っている。
1階部分が空洞になっているのは、かつてラブホテルだった時の名残だろうか。
建物前、Tさんが殺害されたと思しき場所にも、花束が手向けられている。
地上部分の空きスペースには、ゴミが散乱している。
なかには冷蔵庫も捨てられていた。

木々に囲まれた敷地内に建物は建っていた
建物前にも手向けられた花束

細い階段を2階に登ると、カビの臭いとホコリ臭さがムッと鼻を突く。
不思議なことに、建物内に入ると突然、外の音が聞こえなくなる。
遠くに聞こえた車の走行音もまったく聞こえない。
内部は、来訪者達によって荒らされているが、建物の作りはまだしっかりしていた。
ショッキングピンクの壁に囲まれた風呂場も残っている。
その作り、センスを見るに、昭和末期に作られたものだろうか。

壁や床はしっかりとしていたが、内部は荒らされていた
下品な内装に仕立てられた風呂

内部には足音と、同行者たちの声しか聞こえない。
にもかかわらず、探索していた全員が、同時に足を止めた。
建物の1階、地上部分で足音がする。
誰かが、生え放題の木々をかき分け、雑草を踏みながら歩いている音がする。
「不法侵入者がいる」と近所の人に通報され、見回りがやってきた。全員そう思った。

覚悟を決めて1階に降りる。
あたりを見回すが、人っ子一人いない。
怪異らしい怪異は起こらなかったが、この足音については今でも不思議だ。

建物探索後、辺りを探してみたが、誰もいなかった。時刻は午前2時を過ぎていた