John-Titor

インターネット上に現れた「未来人」〜ジョン・タイター


未来について知りたいーー。古今東西あらゆる人々が願う望みのひとつだ。
だからこそ、21世紀の現代でも多くの占い師が存在している。
かつての領主は「戦に勝てるかどうか」を知りたかったかもしれない。かつての農民は「明日の天気」を知りたかったかもしれない。今日も どこかで「彼と付き合えるかどうか」を知りたい女性もいるだろう。
そんな思いが高じてか、たまに我々の前には「未来人」が現れる。
現代の未来人はインターネット上に現れる。シリーズ第1回は、もっとも有名な「ネット上の未来人」ジョン・タイターについて振り返ってみる。

▼目次

1.IBM 5100」などの細かい設定が信憑性を生んだ
2.ジョン・タイターの「予言」は当たっているのか?
3.ジョン・タイターの「微妙に当たっている予言

1.「IBM 5100」などの細かい設定が信憑性を生んだ

インターネット上に現れたタイムトラベラーで、世界的にもっとも有名なのはジョン・タイターで間違いないだろう。
タイターは、2000年11月3日、アメリカの大手ネット掲示板に「2036年からやってきた」と自称し一連の書き込みを行った。
複数の掲示板やチャットでのやり取りを通して、閲覧者と頻繁なやり取りを行った彼は、タイムトラベルの理論や自らが暮らした未来の状況、自身が未来人である証拠を多数提示している。

タイターは、1976年に発売されたパソコン「IBM 5100」を手に入れるために過去に来たと語る。
2038年、パソコンが誤作動を引き起こし世界を混乱に陥れる「2038年問題」を避けるためには、IBM 5100が必要というのがその理由だ。
実際に、IBM 5100は内部でsystem/370のエミュレーションを行っており、メインフレーム上のプログラムのデバッグに使用できる機能がある。

ジョン・タイターが必要とした「IBM 5100」

「未来から来た」という、普通ならば一瞥もされないような荒唐無稽な戯言が、それなりに注目を集め、議論が活発に行われた理由のひとつが、これら実在のアイテムの存在だった。
また、タイターと名乗る人物が(それなりに)博識で、政治、外交、軍事、科学、タイムパラドックスなど、閲覧者が興味を覚える分野に対する質問に、丁寧に回答していたことも理由のひとつに挙げられる。

2.ジョン・タイターの「予言」は当たっているのか?

タイターは軍事目的で2036年から1975年に向かったあと、2036年に戻る途中で1998年に立ち寄り、2000年11月にインターネット上に現れている。その後、2001年3月24日に「予定の任務が完了した」と言い残し、忽然と姿を消している。
その間、彼は多くの「予言」を残している。
その一部について見てみよう。


◎ジョン・タイターによる主な予言(一部)
2000年 2000年問題によって大混乱が起き、のちのアメリカ内戦の火種となる
2001年以降 中国が宇宙に進出
2001年以降 新しいローマ教皇が誕生
2004年 アメリカの対外政策が悪化の傾向。また、この年に開催されたアテネオリンピック以来、公式なオリンピックは開催されず(2040年まで)
2005年 アメリカ国内で内戦が勃発。2015年まで続く
2008年 北京オリンピック中止
2011年 アメリカ内戦の結果、アメリカ合衆国解体
2012年 アメリカ連邦帝国が建国
2015年 日本、台湾、朝鮮半島はすべて「Nデー」(2015年の世界大戦が始まる日)の前に強制併合
2015年 第三次世界戦争が勃発。ロシアがアメリカの主要都市に核攻撃。全世界で30億人が死ぬ。戦争では生物・化学兵器が使用される
2017年 第三次世界大戦はロシア側の勝利に終わる
2020年 ロシアの援助によってアメリカ国内に連邦政府が樹立。首都はネブラスカ州オマハ
2034年 「タイムマシン」が完成
2040年 オリンピック再開
2045年 公共のタイムマシンが普及

2020年を生きる我々ならお分かりの通り、ほとんどの予言が当たっているとは言えない。
北京オリンピックは無事に開催されたし、アメリカで内戦が起こった気配もない。
幸い、第三次世界大戦も起こってはいないし、日本が併合されていることもない。
だが、タイターが生きていたとされる世界線では、2000年問題が後の歴史に大きな影響を残しており、我々が暮らす世界線では特になにも問題が起こらなかったことを目の当たりにしたタイターは、大きく動揺したとされている。
さらに、2000年問題が起こらなかったことを喜ぶどころか「さらに悪い結果に向かっている」と恐れていたという。
「予言が当たらなかった」のではなく、「違った未来に向かっている」ということなのかもしれない。

3.ジョン・タイターの「微妙に当たっている予言」


タイターの物語がいまなお一定の魅力を備えている理由のひとつに、「微妙に当たっている予言」の存在がある。
タイターが予言した未来の日本は、3つのエリアに分裂しており、首都は東京から「岡京」と改称した岡山に移るとされている。
東北地方と関東のほぼ全域、新潟の東半分は「政府管理区域・立ち入り禁止」となり、生活ができなくなるためだ。
2011年3月11日に起こった東日本大震災による津波で福島県の原発は大きなダメージを受けた。
その結果、放射性物質が大量に海中に放出された。
当時「このまま関東一帯は人が暮らせなくなってしまうのではないか」と感じた人は少なくないだろう。

ネット上に広く流布した「ジョン・タイターの日本地図」
2020年の日本を表したものだという


タイターが掲示板に現れたのは2000年。東日本大震災の11年前だ。
現在、立入禁止にこそなってはいないものの、そうなってもおかしくはない状況の手前まで、日本人は経験している。
このシンクロはたまたまの当てずっぽうだろうか。
それとも、タイターが暮らしていた未来と、近似の世界線に我々は暮らしているのだろうか。