連載:「不思議人に会う」1人目〜霊能者 ヨーコ氏
突如授かった霊視能力。その能力が本物なのか確かめるために、彼女は5人の霊能者の元を訪れたーー。激動の半生を経て、現在は霊能者として活躍するヨーコ氏。彼女の現在と、その能力の秘密についてお話を伺った。
霊視能力者はどのように「視えて」いるのか
彼女は「ヨーコ」と呼ばれている。
世間では「ファイヤーヨーコ」の通名のほうが広く知られているかもしれない。
紆余曲折の末、彼女はストリッパーとして30歳という遅咲きのデビューを飾っている。
「トップを取ってやる」と誓った彼女は、たゆまぬ努力と工夫の末に編み出した、おそらく人類史上初めてであろう唯一無二の「芸」で、あっという間にスターダムをのし上がっていく。
彼女のストリッパー時代のエピソードは、上原善広著「異形の日本人 」(新潮新書)で詳しく知ることができるので、ぜひそちらをお読みいただきたい。
現在でも日本全国のイベンターから引っ張りだこの「ファイヤーヨーコ」は、未だ衰えぬその芸で熱狂的なファンを喜ばせているが、ここで語りたいのはその側面についてではない。
彼女はいま、自身の守護霊から降りてくるインスピレーションを元に、優れた能力を発揮する霊能者として活動している。
「私が一番得意なのは透視です。ご相談にお見えになった方の、性格的なところを当てたり、交際相手の心を読み取ったり。企業の方々からご依頼を受けて物件や土地の遠隔透視もします」
最近、こんなことがあった。
建物の遠隔透視鑑定だった。
遠隔で建物の状態を視てみると、シロアリのビジョンが降りてきた。
「『シロアリが視えるんですけど』と担当者の方に伝えたら、『そうなんです。最近、駆除したばかりなんですけど』って言うんです。
じゃあ、他の部分も診てみようかと、天井や壁、柱などを視てみたら、シロアリにやられて柱がスポンジ状の穴だらけになってしまっているのが視え、引っ越しをおすすめしました。
あるビルの透視では天井と壁面に亀裂がいっぱい入っているのが視えた。『雨漏りしてますよね? 最上階はその雨漏りで使えないんじゃないですか?』と伝えたら、『なんでわかるの? 気持ち悪い』って言うんですよ(笑)。気持ち悪いとか怖いとか、これは霊能者にとって最高の褒め言葉。どうもありがとうって」
彼女のもとには全国各地から悩みを抱えた人々が相談に訪れる。
恋愛の悩み、仕事の悩み、病気の悩みや人間関係の悩みといった、個人に関わる相談はもちろん、建物や土地を診て欲しい、どの応募者を採用したほうがいいか診て欲しいといった、企業案件も多く寄せられる。
彼女は霊視をする際、「降りてくる」という言葉を使う。
いったいどのように「視え」ているのか。
「一番近いのは、PowerPointのスライドショーのイメージです。パッと静止画でビジョンが視える。早い展開で降りてくると、それがパラパラマンガのように視えることもあります」
このビジョンは、高次元で繋がっている彼女の守護霊が視せているものなのだという。この守護霊とは、彼女は一度接近遭遇をしている。そのときのエピソードは後述する。
話を元に戻そう。
頭に突然降りてくるビジョン。
たとえば、霊能力などない凡人の筆者でも、目の前に存在しない「赤いリンゴ」を脳内で想像することはできる。
彼女の頭の中にも、このような形で映像が視えているのだろうか。
「それは、自分で思い浮かべるわけですよね、リンゴリンゴリンゴって脳内でイメージを作る。私の場合は唐突にぽんと出てくるんです。こうじゃないかなとイメージを作るのではなく、ぽんって。先ほどのシロアリのケースでも、絵がバンって降りてくるんです」
つまり、高次元の守護霊が視せる最初のビジョンだけでは、彼女はなにを言われているのかわからない。
わからないから「シロアリが視える」とそのまま相手にぶつける。すると「最近、駆除したんです」と次に繋がる回答が返ってくる。
そこから、じゃあ柱を視よう、天井を視ようと霊視を広げていくのが彼女のスタイルだ。
驚くべきは、彼女本人にもわかっていない降りてきたビジョンが、相談者の心当たりにピンポイントに射抜いてしまう、その霊視能力の高さだ。
かくいう筆者も、一度彼女に霊視をお願いしたことがある。
先入観を植え付ける情報などなにも伝える前から、「あなた○○でしょ」と悩みの本質をつく言葉を言われて驚いた。
このインタビューも、筆者自身がその能力に驚き、ぜひ話を聞きたいとお願いして実現している。
突如開花した霊視能力
その類まれなる能力は、どのようにして見つかり、どのように開花したのだろうか。
そもそも、彼女は子どもの頃から感受性は強かったようだ。
思春期の頃を振り返って、次のように語っている。
「中学生のころ、荒れ狂っていたんです。思春期の頃ってそういうことあるじゃない? 親を恨んで、学校を恨んで、すべての対象が憎しみに溢れていて。怒りの感情を持て余して暮らしていたんです。
そのころ住んでいた場所も霊障のある家でしたが、自分の心が引き寄せて程度の悪い霊と繋がってしまっていたんでしょうね。連日金縛りに苦しめられていました」
人の未来を視る、悩み相談に乗る。そのような経験は、ストリッパーとして全国区の人気を得、各地を転々と巡業していたころからすでに始まっていた。
「中学生ぐらいから西洋占星術はやっていたんで、ストリップ劇場の楽屋でも良く鑑定していました。昔はいまみたいにスマホで計算なんてできませんからね、全部緯度や経度と天文暦で手で計算して占っていました。『彼氏が4人いるんだけど、どの人と結婚できる?』みたいなのをね。
次の舞台に行っても、『占いが当たるって聞いたんだけど』『いいよ』って引き受けると、次から次へと私も私もってやってきて朝まで鑑定して眠れない(笑)。今振り返れば、それも修行のひとつでしたね」
不思議な世界への興味はあった。
ストリッパーとして全国を巡業する日々のなか、楽屋を同じくする踊り子たちが、ギャラを手にしてはホストクラブ等に繰り出すのを尻目に、彼女は現地の神社や高名な占い師に会いに行くといった行動を取っていた。
当時はまさか、自分に霊能力が開花するなどとは夢にも思っていない。
だが、これらの経験が収斂して現在へとつながるのだから、人生はなにが起こるわからない。
現在の活動へとつながる明確な転機は2010年に訪れた。
「神社巡りを本格的に始めたのは2010年。東日本大震災の前の年ですね。ある女性週刊誌に全国のパワースポットを巡る企画を出したら通ってしまって。『お前の煩悩の数に合わせて108ヵ所行ってこい』って全国各地を車で回ることになったんです」
ストリッパー時代から信頼している霊能者に企画について相談した。
「そうしたら、私が行ってもいい安全なパワースポットを200ヵ所近くリストアップしてくれたんです。行くととんでもない目に遭う危険な場所もありましたからね」
2010年、まだ震災前とはいえ出版業界は大不況時代。潤沢な予算などあるわけがない。
軽ワゴン車に布団や着替えを積み込み、さらに当時一緒に暮らしていた犬も同乗させての車中泊。北から南まで律儀に巡る旅が始まった。
その旅の道中で、彼女は1回目の神秘体験を経験する。
「108ヵ所を回っていて、後半戦に差し掛かった頃かな、いきなり透視能力がバン! と開いたんです。
たとえば、神社のおみくじを引くときに『これ大吉だな』とわかる。ほかにも自分で手を入れて自分で引くタイプではなく、100円を入れるとコロンと出てくるタイプのおみくじもありますよね? あれでも、『私の次の人が大吉だよ』とわかって同行者がビックリする。なんでわかるの? と聞かれても、私にもわからないよって」
108ヵ所巡りと並行してストリッパーとしての活動も続いていた。
ある日、招聘された劇場で行われたビンゴ大会が行われた。
ビンゴで当たった人が、ステージに並べられた封筒をどれでも持っていっていいルールだ。
封筒内には、劇場の招待券や割引券、踊り子とツーショットできるポラロイドサービス券などのほかに、現金1万円もあった。
「私がビンゴに当たったんですけど、封筒に入っている1万円がわかるわけですよ。『じゃあ私これ』と、一発で1万円を持っていっちゃったからみんなから大ブーイングで(笑)」
なぜかはわからないが、なにかがわかるようになった。
しかし、その力は長続きしなかった。
「いつの間にかシューッと無くなっちゃったんですよね。その力の維持の仕方を、そのときは知らなかったんです。どうやって維持するのか、どうやって広げていくのかがわからなかった」
やがて、彼女は2度めの覚醒をする。
覚醒した力を維持する力を身に着けた彼女は、以後、ストリッパー「ファイヤーヨーコ」から霊能者「ヨーコ」としての新たな道を歩んでいくことになる。
ホンモノが与えた「お墨付き」
「昔はよく熱海のストリップ劇場に呼んでいただいていたのですが、街全体が寂れつつあるし、劇場は踊り子がおらず長い間閉館していたという困難な状況でした。それを見ていてなんとかしないとと思ったんです。私の収入を増やしたいということではなく、熱海の街全体の商売繁盛の祈願のために、あの辺りに呼ばれるたびに、伊豆山神社や三嶋大社にお参りに行っていたんです。
劇場に呼ばれるとチップがどかどか入るので、それを持ってお礼参りを繰り返して、さらにお休みの日にも行っていたらまた開いちゃった」
前回の覚醒時には、なにかがなんとなくわかるようになった。
おみくじの大吉、封筒の中の1万円がなんとなく視えた。
この2回目の際には、人の考えていることまでわかるようになっていた。
「相手としゃべっていると、その人の考えていることがわかるんですよね。自分でも不思議に思って、あとからその人がどういう人なのか周りに聞いたら『そうなの、あの人』と当たっていて。
その感覚はその後も続いていて、ある日、知人と話しをしていたんです。話していると、頭の中に『警察、警察、警察』というキーワードが降りてきた。その知人は悪いことなんかする人じゃないから不思議だったんです。
なんで警察なんだろうと考えていると、次にシケモク(※吸い終わって消した後のタバコ)みたいなタバコが見えたんです。くしゃくしゃの。
そこで『○○さん、マリファナ吸ってる? ごめんね、変なこと言って』って伝えたら、『なんでわかるの? 買っているわけじゃないんだけど、知り合いが持ってくるんだよ』というので驚いてしまって。
もうそれヤバいから、とりあえず全部捨てて、髪の毛丸坊主にして爪切りなって。そして、しばらくその人と距離を置きなさいと伝えたらセーフでした(笑)」
どうやら不思議な力が身についたようだ。
世間一般の霊能者であれば、そのままその力を疑うことなく世間に吹聴するだろう。
しかし彼女は違った。
この力は一体なんなのか、そもそも霊能力なのか確かめたいと考えた。
「たとえば、変な動物霊が憑いてしまっても、動物霊は人間の2〜3ヵ月先の未来くらいなら当ててくるんですよ。動物霊でも霊ですから、人間に視えないものも視える。
ひょっとしたら私には低次元の霊が取り憑いているんじゃないか、不安になって高名な霊能者の先生方に見てもらうことにしたんです」
この「高名な霊能者」が誰なのか、ここでは名前は伏せる。
ただ、スピリチュアルやオカルトに興味がある人なら誰でも知っている霊能者たちであることはお伝えしておく。
ひとりに視てもらった。「本物の力だから大切にしなさい」と言われた。
そこで彼女は満足しない。
最終的に彼女は5人の霊能者の元を訪れ、自身の不思議な力が高次元の存在からのメッセージである確信を得る。
「最初、自分は頭がおかしくなってしまったのではないかと思ったんです。視えているといってもいろいろありますからね。病気かもしれないし、憑依かもしれないし。そもそも人を導く程の霊格なんか私に備わってる訳がない、ストリッパーだしと思ってましたから。
そこで、5人の信頼している霊能者に視てもらって、全員が『本物だから安心しなさい』とおっしゃる。『これはお役目だから、しっかり励みなさい』と言われて、覚悟を決めたんです」
ひとりふたりでは飽き足らず、最終的に5人が同じことを伝えるまで信用しない、徹底的にこだわる姿勢は霊能者として活動を続ける以前から垣間見える。
一時期、彼女はオーラが視えると自称する人々の元を巡っていたことがある。
一層目は青、次に黄色、三層目は赤など、さまざまな色を伝えてくる。
ところが、別の人の元を訪れて話を聞くと、まったく違う色を言ってくる。
誰が本当のことを言っているのかわからない。
「視えない人は適当に言うからぜんぜん違う色が出てくるんですよね。でも、3つの色が3つとも合う人が複数人いたらどう?
10人、20人と視てもらうと、同じことを言う人がポツン、ポツンと出てくるんですよ。そこでやっと、『本物はこの人とこの人なのか』ってわかる」
自分の霊能力を調べるときにも、彼女は妥協しない。
「5人の霊能者に認められた」というキャッチフレーズは伊達ではないのだ。
心の周波数を維持する方法
初めての覚醒時にはいつの間にか消えてしまった透視能力を、彼女は現在でも維持し続けている。
失ってしまった1回目と、高い次元で維持し続けている現在との違いについても聞いてみた。
「心の周波数を常に上げておくんです。これは、心理学的にも言われていることなんですけど、自分が落ちこんだときにこそ楽しいことをするんですよ。
怒ったときや、気分が落ちこんだときにこそ美味しいものを食べて『美味しい』と脳に刻み込む、魂に染み込ませる、それをずっと続ける。
スーパー銭湯に行って気持ちいいとか、YouTubeでかわいい猫の映像を見て『かわいい』とかでもいいの。笑えるDVDを見たり、楽しいことをずっと続けていることで、心の周波数を維持できる。」
滝に打たれたり、断食をしたり、座禅を組んでお経を唱えたりするわけではない。心を幸せに保つ、高い次元に維持する、これが能力を維持する秘訣だと彼女は言う。
「私は怒りん坊なので、たまにやさぐれたツイートもしていますけど(笑)。そういうときこそ、バッとコンビニに行ってアイスとか買って『ああ美味しい』って。それを3日続けていると怒りのボルテージはもう落ちてるじゃないですか。それを脳に焼き付けていくんです。そしてその間に自省も同時に行う。
周波数が合っていないと高次元からのメッセージはキャッチできないんです。通信もできないから、カツーンと大激怒というときは、どんなに旅費をかけていてもあっさり休む。心の周波数が低次元の霊と繋がったら私がヤバいし、そもそもお金を取れる鑑定もできませんから。そういうときはスイッチ入れないんです。絶対に入れない」
高次元の存在との通信は「ラジオみたいに」という表現を彼女は使う。
高い次元の存在との交信だからこそ、自分自身の心も高い次元に保つ必要がある。
しかしその維持には特別な修行は必要ない。我々凡人でもできる、当たり前のことだったりする。
霊能力の有無に関わらず、人が幸せに暮らす大切なポイントでもあるように感じる。
未来は誰でも変えられる
霊能者として活動を始めて、多くの依頼者の相談に乗ってきた。
「鑑定の内容は私、覚えていないから」と語る彼女だが、何人か印象深い依頼者の姿が記憶の片隅に残っている。
「その方は地方都市の小さな町に住んでいる男性で、職場は男性ばかりで出会いがない。『自分は結婚できるでしょうか』と相談にお見えになったの」
その男性を霊視した彼女の脳内に、肩ぐらいの髪の女性の姿が浮かんできた。いける。この相談者はこの肩ぐらいの髪の女性と結婚することになる。
「不安そうにしているその方に、『こんな女性が視えるから大丈夫ですよ』とお伝えしたんです。出会いがないなら、婚活サイトに登録してでもいいから、出会いを求めなさいと伝えました」
そんなことなど忘れていた2年後のある日。
いつもの通り鑑定をしていたら、一組のカップルが訪れた。
「『先生、覚えていますか?』っていうの。誰だろうと思って話を伺っていたら、2年前に先生に視てもらって、無事結婚できました。こちらは妻ですと紹介してくれたその女性、まさにボブカットの美しい女性だったんです」
未来を視る場合、彼女には「確定した未来」が視えているわけではないのだという。
「すべて決まってしまっていたら、修行ではなくなってしまうでしょう」と彼女は言う。
たとえば、相談者の悩みを解決する明るい未来が視えたとする。ただし、その未来は彼女のアドバイスどおりにちゃんと行動すれば、という条件付きだ。
ならば、彼女の見立てでは、この相談者はまずその行動を取らないだろうという場合に彼女はどうするか。
「仮に20%の確率であっても、『こうすればあなたは上手くいく』と伝えるようにしています。その行動を取るか取らないかはその人次第なんです。私は伝えてあげることしかできません。
結果、その人が伝えた通りの行動を取らなかった場合、私の伝えた未来視は外れることになります。すると、その人にとっては『あいつは当たらない霊能者だ』ということになる。でも、例え可能性が20%しかなくてもその道へと導いてあげたいからこそ、(この人は動かないだろう)と思ってもあえてそっちの未来を伝えるんです。『当たらなくてごめんなさい。未熟な霊能者でごめんなさい』、そう思うようにしています」
自己啓発本を読んで触発されても行動に移さなければ人生は変わらない。
筋肉をつけたくてジムにお金を払っても、通って筋トレしなければ体型は変わらない。
参考書を買っても、辞書を買っても、勉強しなければ成績は上がらない。
未来視もどうやら同じことのようだ。
ーー連載「第2回」に続く
ヨーコ氏プロフィール
全国の寺社仏閣、パワースポットを巡る中で霊能力が開花。その霊視能力で、全国の悩める老若男女に的確なアドバイスを送り続けている。